私は久しぶりにこの公園に来た。
幼稚園の隣の、小さい公園。
あるのは滑り台と、砂場と、ジャングルジムと、鉄棒と、ブランコ。
幼稚園と公園は隣接していて、西が幼稚園、東が公園、
北側にはアパートがあり、南側は道路になっている。
公園の真ん中らへんに砂場があり、
滑り台と鉄棒はアパートの方に、ジャングルジムは東の端に、
ブランコは道路の方にある。
道路を挟んで公園の向かいには、
くすんだ窓の付いた小さい物置のような建物がある。
私がブランコに乗っていると、前からトラックがやってきた。
こんな狭い道路をあんな大きなトラックが通るのは大変だなぁと思いながら見ていた。
トラックが過ぎた後も、たまに車が通り過ぎていった。
ふと、ブランコの真横の物置のような建物の窓を見ると、男の子と目があった。
内心ドキッとした。
でもすぐに男の子の顔が描かれた「とびだし注意」という標識であることに気づいた。
どうやら物置の中にしまわれているらしい。
何故しまってあるのだろうか、壊れたのだろうか、と少し考えてしまったが、
標識はしまってあるのではなく、ちゃんと道路に建っていた。
窓がくすんでいるせいで、倉庫の中にあるように見えただけだった。
【解説】
『ブランコは道路の方にある』
『道路を挟んで公園の向かいには、
くすんだ窓の付いた小さい物置のような建物がある』
ブランコは公園内の道路の方にあり、
公園から道を挟んで向かい側に小さな物置のような建物がある。
『私がブランコに乗っていると、前からトラックがやってきた』
ブランコは公園内にあるはずなのに、
なぜかブランコの前からトラックが来ている。
『ブランコの真横の物置のような建物の窓を見ると』
ブランコと物置の間に道があるはず。
なのに、なぜ真横に物置が来ているのか。
つまり、語り手はすでに死んでしまい、
幽霊となってブランコに乗っている。
前からトラックが来ているのに何ともないことから、
ブランコもただの語り手の想像のものである。
語り手が乗っているブランコは
今は道路になってしまっているということ。
男の子の姿は語り手自身の姿だったのだろう。
語り手自身が飛び出してしまい、
そのまま車に轢かれて地縛霊として
公園のブランコに乗り続けているのだろう。