その日、俺は学校が終わった後、
カラオケに誘われ、帰りが遅くなっていた。
「鍵も持たずにいつまで遊んでるの?
帰るの夜中になるんだったら郵便受けに鍵入れておくから、母さんは寝ますからね」
お袋からメールが入った。
俺は母子家庭でお袋とは2人暮らしのため、特に気にされているみたいだ。
俺は気にも留めず、そのまま歌い続け、
家に着いたのは夜中の1時を越えていた。
マンション1階にある郵便受けのダイアルを合わせ、開けると部屋の鍵が入っていた。
その鍵を持ち、部屋に向かった。
鍵を開け、部屋の扉を開けると、お袋は寝たはずなのに、
なぜか明かりがついていた。
リビングに入った瞬間、俺は愕然とした。
お袋がメッタ刺しにされて、殺されていたのだ。
もっと早く帰っていれば、お袋は殺されなかったかも知れないのに…
俺は後悔した。
【解説】
『鍵を開け、部屋の扉を開けると』
部屋には鍵がかかっていた。
普通であれば侵入者は郵便受けのダイヤル番号はわからないはずなので、
郵便受けから鍵を取って、母親を刺し殺してから
部屋に鍵をかけ、また郵便受けに鍵を戻した。
…などと律儀なことをするとも考えづらい。
おそらく母親が郵便受けに鍵を入れにいっている間に
部屋の中に侵入され、母親が部屋に戻り鍵をかけ、
リビングに戻ったところでメッタ刺しにされてしまったのだろう。
しかし、そうなると犯人に鍵をかける術がない。
にもかかわらず、鍵はかかったままである。
ということは、まだ部屋の中に犯人が…。
果たしてこの後、語り手はどうなるのだろうか?