「おい!開けろ!そこにいるのはわかってるんだぞ!」
ドンドンドンッ!
扉が悲鳴をあげるほど激しく叩きながら叫ぶ男。
奴は殺人犯だ。俺と彼女を殺しに来たんだ…。
俺たちは修学旅行で、ここ京都に来た。
だが、宿泊先のホテルで殺人が起きた。
みんな殺された…アイツに!
そして、俺たちだけが生き残った。
俺は彼女を必死に守った。
彼女だけは必ず守りきる!
「おい!早く開けるんだ!はや…」
…!?
急に静かになった…諦めたのか…?
『ドサッ!』
扉越しになにか倒れた音がした。
『ガチャッ!』
いきなりドアが開いた
恐る恐る部屋の中を覗いた…。
「くそッ…」
アイツは………彼女に首を包丁で刺された状態で絶命していた。
【解説】
『彼女だけは必ず守りきる!』
の前後で語り手が変わっている。
前半の語り手は彼女に殺されてしまい、
後半の語り手はドアを叩いていた男である。
なぜ彼女がこのような殺人事件を起こしたのか、
そして、ドアを叩いていた人物は一体何者なのか。
前半の語り手は彼女を守りたいだけ。
みんな殺されてしまったけれども、
彼女は生きているのだから犯人は別にいる、
という考えから扉の向こうで扉を叩いている男を
犯人と考えたのだろう。
それにしても、彼女は自分たちだけになっても、
犯人と思わせないくらいの犯行っぷり。
その彼女がいきなりドアを開けたとしたら…
というよりも、どうやってドアを開けたのだろうか?
部屋を覗いたら前半の語り手が殺されていたのが見えた。
これが押しドアであったとしたら、見えるのは一直線。
つまり、押して開けたドアの部分は死角になる。
ということは、その死角の部分に彼女が隠れていて、
新たに犯行を重ねようとしているのだろう…。
ただ…
『彼女に首を包丁で刺された状態で絶命していた。』
これが彼女が刺したままの状態を示しているとしたら、
誰がドアを開けたのだろうか?
正直考えれば考えるほど
謎な部分が出てきてしまうように思う…。