私の彼はひどい人見知り。
知っている人にはむしろ強気なくらいなんだけど、
初対面の人にはレジの店員にすらおびえる始末。
ある夜そんな彼と、「出る」って噂のホテルに泊まることになりました。
他の客に怯える彼にため息をつきながら私がチェックインを済ませました。
その夜、出たんです。女の幽霊が、何人も。
幽霊たちは皆恐ろしい形相をしており、私はすっかり腰が抜けてしまいました。
ところが彼は、最初こそ驚いたものの、幽霊たちと目が合うなり
手元にあった雑誌を丸めて蠅でも払うように幽霊たちを追い払ってしまいました。
怖くないのか尋ねると、
「ただの地縛霊だろ」
ですって。
人じゃなければ平気なのね…
少し呆れながらもはじめて彼のことを頼もしく思えました。
【解説】
『他の客に怯える彼』
『人じゃなければ平気なのね』
極度の人見知り(人嫌い?)で
よく人がたくさんいるホテルに泊まろうと思ったもんだ。
幽霊が近くにいるから安心…とか?
ここまでおびえている『彼』ですが、
語り手は一体どうやって仲良くなったのだろうか?
人じゃなければ平気なのね』
とあることから、語り手の『彼女』自体が
人ではない存在?
しかし、チェックインをこの語り手が行っていることから、
幽霊ではないのだろう。
となると、人と会話ができる妖怪の類なのだろうか…?
それにしても、
『ただの地縛霊だろ』
と幽霊に対しては強気になれる彼が素晴らしい!