俺が公園のベンチに座っていると、突然知らない女が話しかけてきた。
女はワケのわからないことを俺に言ってくる。
気持ち悪い女だと思い適当にあしらって帰ろうとしたが、
いきなり俺の妻は死んだとか言いだしたので、頭にきて怒鳴りつけてやった。
それでも女は俺の後をついてきた。
気味が悪いので早足で帰っていると、今度は見知らぬ男が話しかけてきた。
いったいなんなんだこいつらはと思ったが、
男のほうは話してみると意外といい奴みたいだった。
男の名前を聞くと、驚いたことに去年生まれた息子と同じ名前だった。
俺がそのことを伝えると、男は困ったように笑った。
こんな偶然もあるものなのだな。家に着いたら、妻に話してやろう。
しかし、この男と女はどこまで着いてくる気なのだろう?
【解説】
『去年生まれた息子と同じ名前だった。』
『俺がそのことを伝えると、男は困ったように笑った。』
男は語り手の息子だった。
そのため、反応に困り笑うしかなかった。
『この男と女はどこまで着いてくる気なのだろう?』
着いてくるのも一緒に住んでいるから。
『突然知らない女が話しかけてきた』
『いきなり俺の妻は死んだとか言いだした』
知らない女性が娘であれば「お母さん」と言うはず。
しかし、『俺の妻』と言っていることから、
見知らぬ女性は「お母さん」ではなく、名前で呼んだ。
つまり、息子の妻。
語り手はおそらく認知症となり、
最近の記憶がなくなり、
息子が生まれて一年までの記憶となっているのだろう。