ある貧しい家庭に生まれた少年がいた。
母親は体調が優れず寝ていることが多く、
父親が家事をしていたが食事の支度だけは母親も手伝っているようだった。
体調が悪化した母親は亡くなり、父親も後を追うように自殺してしまった。
身よりの無くなった少年は親戚に引き取られた。
少年が今まで貧しい生活をしていたことを知っていた親戚は、
少しでも贅沢な暮らしをさせてやりたいと思い、豪華な玩具を買ってやると少年はとても喜んだ。
食事もできるだけ豪勢にしようと夕食にステーキを用意した。
しかし少年は大して喜ぶ様子もなくステーキを口にしたが吐き出してしまった。
何も知らない親戚はただ少年を不敏に思うだけだった。
【解説】
『少年は大して喜ぶ様子もなくステーキを口にしたが吐き出してしまった。』
ステーキに喜ばないということは、
いつもステーキを食べていたか、
そもそもステーキ自体を知らなかったのか。
『何も知らない親戚はただ少年を不敏に思うだけだった。』
と、『何も知らない親戚』とあることから、
おそらく「ステーキを知らない、食べたことのないくらい貧しかった子」
と受け取ったのだろう。
となると、それとは別解釈をすることになる。
貧乏なのにいつもステーキ(のようなもの)を
食べていたのかもしれない。
『母親は体調が優れず寝ていることが多く、
父親が家事をしていたが食事の支度だけは母親も手伝っているようだった。』
とあることから、
少年は母親のことをあまり見ていないようだろう。
食事を手伝っている姿も見ていない。
なので、母親がどんな姿になっていても気付きづらい。
つまり、母親自体が食材となって、
ステーキのようなものを作り上げていたのかもしれない。
少年がステーキを吐き出してしまったのは、
いつも食べていた肉と違っていたから。
人の肉の方が美味しかったから?
それとも高級すぎる肉が口に合わなかったから?
人の肉の方が美味しいというのも怖いが、
あまり良いものを食べていない人が高級なものを食べると、
美味しく感じず、むしろ残してしまうことがよくあるそうな。
値段を言えば、頑張って美味しいと思おうとするのであろうが、
値段を言わなければ、「不味い、食べ物じゃない」などと
いう感覚に陥ることもある。
高い食材をそのまま捨ててしまうというのは、
ある意味怖いことかもしれない。
かく言う私自身も、
高級なものは舌に合わないのである…。
(食べる機会がないから困らないが…)