近頃近所で殺人事件が相次いでいた。
それを知っていても私は夜道を運動のため走っていた。
走ること数分間。
遠くのほうに街灯が見え、その袂に誰かいた。
だんだんと街灯に近づく。
その人物は不気味だ。一歩も動かない。
まさか、あいつが犯人だろうか?
そう思った私は、走る速度を上げた。
その男はこちらを見ると、絶叫した。
怪訝に思ったが、私は無視を決め込んだ。
怪しい人物に関わらないようにしよう。
私は、逃げるようにして男の前を通った。
――その後、「私」を見たものはいない
【解説】
語り手の後ろには殺人鬼がいた。
(包丁でも持っていた?)
『遠くのほうに街灯が見え』
街灯に立っていると街灯のところだけが明るいため、
遠くにいる側からはわかるものの、
街灯にいる人からすると周りはくらいため暗いため、
誰がいるのかはよくわからない。
街灯の前に語り手が来た時に、
殺人鬼が後ろをついてきているのを見て
その怪しい男は絶叫した。
(殺人鬼だと気付いたということは、
なんらかの武器を持っていた。
『――その後、「私」を見たものはいない』
語り手は殺されてしまった。
・・・・しかし、「私」を見たものはいないと、
『私』が強調されていることが少し気になる。
実は語り手が
『自分の顔を見た者は殺してしまう』
という殺人鬼であったのだろうか?