彼が店を出ると、雨が降り始めていた。
傘立てから自分の傘を取り、通りへと出る。
しばらく歩いていると、後ろから誰かが追いかけてきて彼に言った。
「あの!・・・そ、それ私の傘です!」
振り返ると、そこには女性が濡れながら立っている。
どうやら傘を間違えて持ってきてしまったようだ。
彼は素直に謝り彼女に傘を返すと、雨の道を濡れながら歩いた。
そして家に着いた彼は彼女に別れを告げ、素早く部屋に入りシャワーを浴びた。
服も体も濡れてしまっていたので早く体を温めたかったのだ。
処理しなければならない仕事も残っているが、夜にする事にしよう。
シャワーから出て体を拭き髪を乾かした彼は、身支度を整え家を出た。
まだ雨が降っている。
彼は自分の物になった傘を差すと、家路へと急いだ。
【解説】
『彼』は傘の持ち主の『彼女』を尾行している。
『そして家に着いた彼』
これは彼女の家に着いたということ。
『彼女に別れを告げ』
彼女を殺した。
『素早く部屋に入りシャワーを浴びた。』
体も実際冷え切っていただろうが、
返り血を洗い流すためにシャワーを浴びた。
『処理しなければならない仕事も残っているが、』
これは死体処理という仕事が残っている。
『自分の物になった傘』
間違って持ってきた傘をまた自分の物にすることができた。
傘を間違えて持っていかれたことを指摘しただけなのに、
それで殺されてしまうなんて・・・。
そんなにその傘が気に入っていたのだろうか・・・?