強烈な空腹感で目が覚めた。
体を起こしてみるが部屋には誰もいない。
「また男の所か。」私は腹立たしい気持ちを抑えてベッドに横になった。
またどうせ明日まで帰ってこないのだろう。
やっと歩けるようにはなったが、まだ一人では食事もままならない。あの女にとって私などペットのようなものなのだろう。
いつか復讐できる日まで、淡々と生き延びようと思う。
あと10年くらいか…。
【解説】
『やっと歩けるようにはなったが、まだ一人では食事もままならない。』
から、語り手は乳幼児であることがわかる。
『またどうせ明日まで帰ってこないのだろう。』
母親が乳幼児を一日放置することが度々あるのだから、
これは育児放棄と言えるだろう。
『いつか復讐できる日まで、淡々と生き延びようと思う。
あと10年くらいか…。』
復讐するまであと10年、小学生高学年くらいとなる。
まだ、ちょっと幼いかな?とも思わなくはないが、
復讐に燃えると何をしでかすかわからない。
また、復讐すると誓ってからの期間が長いと、
心を悪魔に売ったように何でもできてしまうだろう。
それにしても・・・
乳幼児の頃からはっきりと自我がある。
乳幼児から自我を持っていると、
本当に何もできず、辛い日々を送ってしまうのではないか?
これはある意味拷問と言えなくもない。
前の記憶を持ったまま生まれ変わりたい、
なんて人もいたりするが、
それは結局拷問に近いものになりうるのではないだろうか?