神は何故、このような能力を俺に与えたのか…。
何故、俺なんだ。
この世界と同じでいて、全く異なる世界。
同じ建物、同じ人間、同じ社会。
全く同じなのに、まったく異なる世界に、
俺の気持ちと関係なく行き来出来てしまう能力を、
何故、俺に与えた。
向こうの世界のキミは言う。
『佳祐、大好きだよ』
こっちの世界のキミは言う。
『あんた何?
さっきからジロジロ気持ち悪いんだけど』
全く同じでいて、全く異なる世界。
あるとき、向こうの世界のキミは俺に言った。
『一人にしないで。いつでもあなたの傍にいる』
あるとき、こっちの世界のキミは俺に言った。
『それ以上、近付かないで。何なの、あんた』
同じ顔したキミが、俺に言う台詞。
向こうの世界のキミは
『ずっと、死ぬまで一緒だよ、佳祐』
こっちの世界のキミは
『それ以上近付いたら、私はあなたを殺す』
俺は、本来どっちの世界にいた人間だったのだろう。
あるとき、向こうの世界のキミは言った。
『いなくならないで。あなたは私だけのものだから』
あるとき、こっちの世界のキミは言った。
『ほんと無理。
もういい加減、私はあなたを殺さないと気が狂いそう』
全く同じで、全く異なる世界。
俺は一つの決断をしたよ。
これが最善の方法だと確信したから……
向こうの世界のキミは言う。
『えー、何でー?それは私が…。』
こっちの世界のキミは言う。
『何こいつ。でも、私の手を汚さずに済んだからいいけど』
神様、願わくば、
もし生まれ変われることが出来るなら、
もっとまともな人生を過ごさせて下さい………。
【解説】
どちらの世界の『キミ』も
語り手を殺そうとしていた。
そのため、語り手は自殺した。
悲しいお話。