ねぇ、知ってる?足売り婆…
知ってる、知ってる!
「足いるか…?」
って聞いてくる大きな風呂敷背負ったお婆さんでしょ?
そうそう!
「いる」って答えると、
風呂敷に入っている足を無理やり縫い付けられて、
3本足にされちゃうの…
「いらない」って答えると
足を1本切り取られて、
切られた足は風呂敷の中に入れられちゃうんだって…
怖いよねぇ~
回避する方法は確か…
下らない…
そんな事を思いながら、
係の仕事をしていた。
今はだいたい4時少し前。
教室に残っているのといえば、
さっきから噂話に花を咲かせる女子数名と
係の仕事で残っている僕ぐらいだ。
そんな僕も仕事を終え、
教室をあとにし、帰路についた。
ついこの間迄は放課後はいつも、
同級生の池田と一緒に近くの公園でサッカーをしていたけど、
ある日を境に顔も見なくなった…
そんな事を考えながら、
通学路を歩いていると…
「足はいらんかね…?」
振り向くと、
そこには大きな風呂敷を背負った老婆が立っていた。
(出た…本当にいたんだ…)
そこでさっきの噂話が思い出される。
回避する方法は確か…
「わたしはいりませんけど、
○○さんはいると思います」
って言うんだって!
ちょっ、それひどくないっ!?
あんた会ってもわたしのこと、売らないでよっ!!
「……っ!
僕はいりませんが、
3丁目の池田君はいると思います…」
「ひっ!ひ~ひっひっひっひ
お前は我が身かわいさに友達を売ったんだ!!
その罪悪感を背負って惨めに生きていくがいいさ!」
男の子が何をするでもなく、
ただただ机に向かっていると、背後から
「ひ~ひっひっひっひ…」
振り返ると
「足売り婆…!」
「足はいるかい…?」
「い、いります!!」
「ひっ!ひ~ひっひっひっひ
恨むならあの子を恨みな!
我が身かわいさにお前を売ったあの子をねぇ!!」
そこ迄言って、
振り返った男の子を見た足売り婆は
残酷なまでに楽しげな表情を凍りつかせ、
言葉を詰まらせた…
「僕はまた皆と…」
その日以降、
足売り婆は僕たちの町には現れなかった…
【解説】
池田君は片足を失ってしまった。
そのため、
学校にも来なくなってしまった池田君。
語り手は
一生サッカーをできない体になってしまった池田君の気持ちを考え、
それでも彼の為に何もできる事の無い自分を情けなく思っていた。
そこで足売り婆に会い、
「また一緒にサッカーをやりたい!
またあいつにサッカーをやらせてあげたい!」
そう願って、
足売り婆を池田君の元へと行かせた。
足売り婆は池田君の姿を見て、
語り手の考えを理解した。
この時、足売り婆は
一体何を考えたのだろうか?