その日私は残業を終えての帰宅途中だった。
『すっかり真っ暗になっちゃった…』
最近ここらへんでは変死体が多いらしい。
もう何人も見つかっている。
なんでも全ての遺体が喉元を引きちぎられているとか。
『早く帰らなきゃ。……ん?』
真っ暗闇の中、1匹の猫がいた。
そうっと近づいてみても逃げない。
それどころかいたるところから血が出ている。
このままでは死んでしまうかもしれない、
そう思い私はその猫を連れて帰ることにした。
帰宅して、餌をやったが食べない。
お腹が空いてないんだろうか。
それならとお風呂場で猫を洗ってあげた。
なんとも気持ち良さそうだ。
『っていうかお前どこも怪我してないじゃない!
しかも汚れてただけで白ね…』
猫は私を見つめ、
ゴロゴロと喉を鳴らした。
【解説】
変死体の犯人は猫。
喉元を引きちぎって食べていた。
猫が餌を食べなかったのは
満腹だったからではなく、
人肉に味をしめていたから。
汚れていたのは
返り血を浴びていただけだから
怪我をしていない。
語り手はこれから猫に
食べられてしまうだろう…
可愛い顔して獲物を狩る。
なんて恐ろしい…