既視感……
通称『デジャヴ』という現象をご存知でしょうか?
初めて体験した状況・状態のはずなのに、
過去に同じ場面に遭遇した覚えがある……
そんな感覚に襲われるのがデジャヴです。
前に予知夢でも見ていたのだろうと理屈付けしたくなりますが、
夢で体感したこととは思えないほど鮮明な記憶に合致するので、
本当に過去に体験したのではないかと錯覚してしまいます。
これはそんなデジャヴにまつわるお話。
大急ぎで駅の改札を抜けたが、
すでに電車の扉は閉まっていた。
ああ……やってしまった……
私は仕方なく、
発進して速度を増す電車を
恨めしげに見ながら白線前に立った。
次の電車でも時間には間に合うのだが、
もう少し余裕を持って間に合うように
今の電車に乗りたかったのだが……
ため息をつきながら、
カバンから携帯を取り出す。
時間潰しにSNSでも見て回るかな……
『まもなく、○○行き電車が到着します。
危険ですので、――』
私の後ろに何人か並んだ頃、
放送アナウンスが流れた。
電車が来たことを視認し、
携帯をカバンに戻す。
「ヘックション!」
不意に、隣の人がくしゃみをした。
……あれ?
この状況、なんだか身に覚えが……
確かこの後、私……
私は咄嗟に後ろを振り向い――
【解説】
語りては最後に後ろの人に押されて
線路に落ち、轢死してしまう。
語り手はデジャヴを感じており、
それが現実のものとなってしまった。