オレには誰よりもスゴい能力がある。
ひとを消せるのだ。
気に入らないヤツがいればそいつの目を見ながら
指をパチンと鳴らせばそいつは消える。
そいつがこの世にいたことすら消すことができるんだ。
最初の頃は怖かったけど、
ひとを消すたびにスゲェ快感がオレを襲うんだ。
だからやめられなくなっちまうんだ。
仕事がうまくいかなかったときは
上司を消した。
ギャンブルに負けたときは
勝ってるヤツを消した。
親もウザかったから消した。
今日も気に入らないヤツがいたから
消してやった。
俺様はえらいんだ、
誰も俺様には逆らえない。
なんだ、俺様に向かって
スゲェふてぶてしい顔をしてるヤツがいる。
俺様を誰だと思っていやがる。
まぁいい。
オレにはこの能力がある。
お前なんかこの世にいたことすら消えるんだ。
さぁ、消えろっ!!
男は消えた。
【解説】
語り手は鏡の中の自分を見て
『スゲェふてぶてしい顔をしてるヤツがいる』
と感じ、消そうとした。
その結果、自分が消えてしまった。
あと、
『そいつがこの世にいたことすら消すことができるんだ』
というのであれば、
親を消してしまったら
語り手は生まれて来なかったことになる。
なので、語り手は
この文章を書いたときから
存在してはいけない存在だったのではないだろうか…