今日は中学時代の同窓会。
あれから12年経つ。
皆変わってるんだろうな。
特にオレは変わった。
中学時代のオレはデブで、
好きな女の子にも気持ち悪がられたり無視されたり、
従姉妹にも口をきいてもらえなかった。
女の子と話した記憶もない。
それが、今はどうだ。
高校からダイエットに励み、
大学に入る頃には太っていたなんて
想像も出来ないくらいスマートな体型になっていた。
彼女も出来た。
ダイエットが成功してから、
女の子から声を掛けられることが多くなった。
実感は無いが、
それなりにイケメンらしい。
あー、早く皆に変わった姿のオレを見せたい。
見せて驚かせてやりたい。
酒を飲むだろうから、
車じゃなく、今日は歩きだ。
つい浮かれてしまっていたのか、
同窓会開始の時間に遅れそうだ。
やっべ！
信号が青になるのを待つのももどかしい。
ん？事故でもあったのか？
あーあ、トラックが人撥ねたみたいだな。
信号無視か。
うわ、地面血だらけっ！
トラックの運転手も可哀相に。
自業自得だな。
あの血の量からして、
まず助からないだろ。
ドンマイ。
…っと、いけねっ！！
事故現場を野次馬してたら、
いよいよ遅刻ギリギリだ。
急がないとっ！
早く皆にオレの変わった姿を見せてやりたいぜっ！！
同窓会会場に着いたが、
皆、特に驚きもしないどころか、
話し掛けるオレを無視して酒を楽しんでいる。
【解説】
語り手は信号無視でトラックにはねられ
死んでいる。
それに気づかず同窓会に参加したものの、
幽霊になっているため誰にも気づかれず、
他の参加者は語り手を無視してお酒を楽しんでいた。
信号無視でトラックにはねられた語り手が
幽霊になってからはきちんと信号待ちをしている。
信号無視をした後悔があったから
「信号無視は絶対にしない！」と
幽霊となって信号待ちから再スタートしたのかもしれない。
