「いきたくないよ」
僕は必死に抵抗した。
「中学生活ももう少しで終わりだから、
高校生になったら携帯も買ってあげるし、
新しい友達も増えるだろう」
父は学校に行かなくなった僕を何度も説得した。
「でも……」
「大丈夫だよ、お父さん送るから」
僕はしぶしぶ了承した。
「わかったよ」
父が先に家を出た。
母にぶっきらぼうに告げた。
「いってきます!」
鞄を持ち、
靴を履くとすぐに玄関を飛び出して
エレベーターを待つ父親に叫んだ。
「いってきまーす」
【解説】
最後の
『いってきまーす』は
「逝ってきまーす」。
つまり、語り手は
マンションから飛び降りた。
最初の
『いきたくないよ』は
純粋に「行きたくないよ」だったのだろうが、
学校に行くよりも死を選ぶくらい追い込まれていたようだ。
両親は飛び降りた語り手を見てどう思ったのだろうか…