俺には彼女がいた。
2年前から付き合っていて、
俺たちは幸せな日々を送っていた。
だが、いきなり彼女が行方不明になった。
警察にも捜索願いを出した。
彼女が居なくなってから数週間。
居なくなってから初めて、
以前彼女が使っていた部屋へと入る。
彼女が好きだった狸のぬいぐるみやらなんやらがいっぱいある部屋へ。
ふと、部屋にある机を見ると
小さなメモ書きがあった。
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たたたたひたたたたたたさたたしたたぶたたたたりたたたにたむたたかたたしたたあたそんたたたたたたたたたたたたたたただたたいたどたたたたにたたいたたったたたたてたたきたたますたたたたあたたのたとたきたたたたたのたたもたたたのたをたたとたりたたたたにたたいたくたたただたたたけたただたたかたたたらたたしたたたたたたたたたたたたたたたたたたんたたぱたたいたたしたたなたたいたたでたねたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたた
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昔から彼女はこういう謎めいた文章を書くのが好きだった。
俺はそれを読んで、血の気が引いた。
もしかしたらっ…!
俺は車の鍵を掴み家を出た…
【解説】
彼女は狸のぬいぐるみが好きだった。
『狸』→「た抜き」なので、
謎めいた文章から「た」を抜くと、
「ひさしぶりにむかしあそんだいどにいってきます
あのときのものをとりにいくだけだからしんぱいしないでね」
つまり、
「久しぶりに昔遊んだ井戸に行ってきます。
あのときの物を取りに行くだけだから心配しないでね」
となる。
この文章は部屋の中を見られて初めて読まれる。
ただ井戸に行くだけなのに、
帰ってこれない予感でもあったのだろうか?
なんだか井戸に呼ばれたようで恐ろしい…。