【意味怖】意味がわかると怖い話まとめ

【意味怖】意味がわかると怖い話を読んで頭の体操を!捉え方は人それぞれであり、答えは一つであるとは言えません。解説も答えではなく、一つの捉え方。あなたがどう捉えたかを教えていただけると幸いです。


【意味怖】合わせ鏡

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私は有休を使って会社を休み、
久々に趣味の読書に勤しんでいた。


だが、自分の読書スピードが早すぎるのか、
本棚にぎゅうぎゅう詰めになった書物は全て読み終えてしまい、
古本屋に買いに行くことにした。

 

古本屋に行くと
「悪魔の呼び出しかた」という
いかにも胡散臭い本が一冊だけあった。

 

五十音順にも並べられていなければ、
恋愛小説というジャンルさえも場違いだ。

 

私は元あった場所に戻そうと試みるが、
どうも場所がよく分からない。

 

何せ古本屋に来ることさえ久しぶりだ。

 

態々本を買うのに金をけちった軽い戒めなのだろうか。

 

とりあえず本を手にとってしまったし、
戻す場所も分からないのだ。

 

どんなジャンルであろうと読んでやろうじゃないか。

 

家に戻った私は書斎の椅子に深く腰掛け、
買ったばかりの文庫本を開く。

 

「えー、合わせ鏡をすることで簡単に出てきます。
ただし、きっちり午前0時にしなければ悪魔は現れません……
って、おいおい」

 

なんだ、そんな簡単に出てくるのか悪魔って。

 

それだったら夜中目が覚めて
三枚張りの鏡がある洗面所を使えば
気付かぬ内にって事もあるんじゃないか?

 

私は罪無き本にツッコミを入れる。

 

小説ではなくハウツー紛いの本だった怒りと、
午前0時まで待たなければいけないのかというイライラが
普段は冷静な自分の心をそうさせたのだろう。

 

とにもかくにも、
午前0時まで待った方がいいようだ。

 

時は過ぎて午前0時。

 

いよいよである。

 

あの後少し本を読んで見たのだが、
どうやら呼び出した悪魔は3つ願いを叶えてくれるらしい。

 

しかし図に乗って3つ一気に叶えてしまうと魂を奪われるようで、
2つ目の願いで合わせ鏡を解き、
それ以降は同じ事をしてはいけないという。

 

どうせ暇なんだ。

 

たまには学生時代のように馬鹿やって、
紛い物に時間を費やすのも悪くはない。

 

三枚鏡がある洗面所に足を踏み入れ、
腕時計を確認しながら期を待つ。

 

瞬間、秒針分針時針の全てが真上を向き、
それと同時に合わせ鏡を作り出した。

 

「…………ん?」

 

何故だろう、
時間ピッタリに合わせ鏡を作り出したはずだ。

 

何故悪魔が出ない?

 

「やっぱり出てこないか。
……出てこい悪魔ー」

 

無理だと分かりつつ、
冗談半分で合わせ鏡に呼び掛けてみる。

 

……やはりガセネタみたいだな。

 

私は自分が選んだ未来な故、
特に気にせず合わせ鏡を解こうとする。

 

「えーと、呼びました?」

 

刹那、私の動きが止まった。

 

ヒョッコリ表れた消しゴムくらいの黒い人影は、
赤い目をこちらに向ける。

 

これが悪魔か。

 

私は暫くの間言葉を忘れ、
黒く小さな人影を凝視していた。

 

「あの、ご用は何で?」

 

悪魔は腕組みしながらこちらに尋ねる。

 

呼ばれた私は自我を取り戻し、
本来の要件を思い出す。

 

いや、
本来も何も出来なくて当たり前と思っていたので、
予想外と言えば予想外だったが。

 

「願いを少しばかり叶えて貰おうと思ってね」

 

私がそう告げると、
悪魔はまたですかといわんばかりにため息を吐いて言った。

 

「あー、はい、分かりました。
では、3つまで大丈夫なんで、どうぞご自由に」

 

それにしてもだいぶ投げ遣りな悪魔のようだ。

 

一体誰に呼び出されるのかと期待していたのか、
気になるところだったが、
手短に済ませた方がよさそうだ。

 

「ひとつは金が欲しい。
出来れば気前良く一億円くらい」

 

失敗に終わると思っていたので、
特に願いは考えていなかったが、
思い付く辺りの願いを挙げてみた。

 

「はい、全然問題無いですよ」

 

我ながら図々しいと思ったが、
こういう類いの願いも大丈夫らしい。

 

私は続けて2つ目の願いを言う。

 

これが実質最後の願いだ。

 

「あとは健康祈願かな。
長生きしなくてもいいから
とりあえず一生健康でいたい」

 

まあ、これも一般的なところだろう。

 

悪魔は私の願いを聞いて、浅く頷く。

 

よし、ここで合わせ鏡を解くんだな。

 

私は合わせた三枚鏡を元に戻すと、
悪魔もそれにならって消えた。

 

少し気の毒だが、
楽しい経験をさせてもらった。

 

にしても、ちょっと前から目が眩むな…………

 

 

【解説】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初に悪魔を呼んだことが

一つの目の願い事としてカウントされていた。

 

そのあとに、1億円と健康を願ったため、

一気に3つの願い事を叶えようとしてしまったことになり、

目が眩んでいるのは

語り手はこれから死んでしまうから。

 

 

悪魔は3つの願い事を言わせるために

最初はわざと見えないところにいたのであれば

かなりの策士である…。