昨日の夜、
息子の信吾から電話があった。
明日からうちの近くにある温泉へ家族旅行に行くらしい。
一人息子の信吾は結婚し、
5歳になる息子・裕太がいる。
裕太は私にとって、
まさに「目に入れても痛くない」大切な孫だ。
私は急いで迎える準備をした。
翌日、夕方になって息子の嫁、香織さんから電話がきた。
香織さんはとても明るく元気で思いやりがあるが、
いいとこ育ちで世間知らずなのが玉に瑕だ。
「あ、お義父さんお久しぶりです!」
「あぁ。温泉は楽しめたかい?」
「はい!すごく良いところですね!!
裕太もはしゃいじゃって大変だったんですよ~」
「そうかそうか、そりゃあよかったねえ」
「あっ、お義父さん、お土産何がいいですか?」
「あぁいいんだよそんな気を遣わなくて」
「いえいえ遠慮なさらずに!」
「…そうかい?じゃあ温泉たまごを頼もうかねぇ」
「おんせんたまご…って何ですか?」
あまりにも衝撃が大きかった。
まさかそんな質問がくるとは…
「…まぁ、ゆでたまごみたいなものだよ」
「…あっ、わかりました!!
じゃああと2時間後ぐらいに向かいますね。
そうだ、裕太に代わりますね」
「もしもしおじいちゃん!?」
「おぉ裕太、元気だねぇ」
受話器から聞こえる甲高い声。
私も歳だからたまに何を言っているか聞き取れないこともあったが、
その声に自然と笑顔になる。
裕太は次々と色んな話を嬉しそうにしてくれる。
幼稚園で私の絵を描いたこと、
温泉ではしゃぎすぎて転んだこと、
ペットの犬が子供を産んだこと…
「あっ、あとねぇ」
ブツッ
突然電話が切れた。
裕太の声はツーツーという電子音に変わった。
きっと話し中に変なボタンを押してしまったんだろう。
あぁ、早く裕太の顔が見たいなぁ。
【解説】
ゆでたまご
↓
茹でた孫
実際にそう捉えたとしても本当に孫を茹でるとか、
世間知らずどころの話ではない。
何をしでかすかわからないから
恐ろしい人である…。