暗闇の中に1人の少女がたたずんでいる。
私は少女に声をかけた。
「何をしているの?」
少女は小さくつぶやく。
『くのじ』
私はまた声をかける。
「どういうこと?」
『ままはあそこ』
「ねぇ、ママがどうかしたの?」
『ぜんぶでろく』
「何が6なの?」
『いぬをさらう』
「ねぇ、あなたは何が言いたいの?」
『かまれちゃう』
「いい加減にちゃんと話して。犬にかまれたの?」
『いたかったの』
「犬にかまれて痛かったの?」
『かなしかった』
「かまれて悲しかったの?」
『いらないから』
「犬がいらないの?」
『まだこどもよ』
「ああ、もう。ちゃんと答えてくれる?」
『いいころだわ』
「…ちょっと、いい加減にしてくれる?
ねえ、あなたはどこから来たの?」
『はまべにすむ』
「浜辺?もっと、ちゃんと答えてくれない?」
『もうおわるの』
…何を聞いても、
ろくな答えは返ってこない。
私はしびれをきらして強く言った。
「もう!!何が言いたいのよ!!?」
すると、少女は鬼のような形相になって
『『『お前もだぁっ!!!!』』』
そう叫んだ。
そして、私の意識はそこで途切れた。
【解説】
少女の言葉を並べると、
『ままはあそこ』
『ぜんぶでろく』
『いぬをさらう』
『かまれちゃう』
『いたかったの』
『かなしかった』
『いらないから』
『まだこどもよ』
『いいころだわ』
『はまべにすむ』
『もうおわるの』
となる。
そして、少女は最初に
『くのじ』
と言っている。
これは
「"く"の字」
という意味。
なので、"く"の字の形になるように
先ほどの言葉を上から読んでいくと、
こ
ろ
さ
れ
た
か
ら
こ
ろ
す
の
と、
「ころされたからころすの」
「殺されたから殺すの」
という意味になる。
少女は誰かに殺されて、
その恨みから無差別に人を殺していた。