きょう、お父さんがつれて行かれました。
お父さんは白くて大きなテーブルの上によこむきにねかされ、
たすけてーというような目でぼくのほうを見ていました。
おりの中のぼくはさけぼうと思ったけど、
もちろんそんなことはできませんでした。
お父さんはぼくが見ている目のまえで、
お父さんと同じくらい大きな鉄のいたで、
ふつうに頭を切りおとされました。
かなしい目をした頭は、
すぐに近くのごみばこに捨てられました。
そのあとおなかを引き裂かれ、
おなかのなかみを引きずり出されていました。
お母さんのときと同じでした。
ぼくは泣きました。
泣けませんでした。
明日はぼくのばんみたいです…。
【解説】
お父さんもお母さんも語り手も魚。
家族一緒に連れてこられたのは幸か不幸か…
家族が死ぬところは見たくないか…
魚はおいしく食べさせていただいているが、
こういうものを目にするとちょっと食べづらくなってしまう…。
他の命を奪って生命の維持に役立たせているのだから、
日頃の食事には感謝しなければいけないかな、
と思ってしまう。