父親が入院している病院にお見舞いに行った時の話なんだが、
一緒に見舞いに行った弟はジッとしてるのが苦手。
その日も「ちょっと病院の中探検してくる」といって
父の病室から出て行った。
しばらくすると顔を真っ青にした弟が
足早に戻ってきて俺の顔を見るなりこう言った。
「オバケ出た!」
「はぁ?オバケ?」
「うんオバケだよ」
「アハハハハ、真昼間から何言っているんだよ」
「あっちの部屋!まだ居るかも・・・早く来て」
俺の袖を掴んで案内しようとする弟。
別に俺見たくねぇし・・・って本当に行くのかよ。
半ば無理やり連れて行かれた俺達が見たのは
部屋の前に立っていた看護師だった。
看護師にこの部屋について尋ねても誰も居ないと答えた。
「やっぱり夢でも見ていたんじゃないのか?」
「嘘じゃないよ本当に居たんだよ・・・
空中にブラブラ浮いてて足の無いオバケが」
ムスっとふくれっ面になっている弟をなだめて俺達は父の病室に戻った。
【解説】
『部屋の前に立っていた看護師』
『看護師にこの部屋について尋ねても誰も居ないと答えた』
看護師さんが部屋の前に立っているのはおかしい。
部屋には誰もいないと言って、
誰も部屋に入れないようにしているようだ。
つまり…
『空中にブラブラ浮いてて足の無いオバケ』
というのは、
自殺した患者さんということだろう。
首つりして浮いていたため、
足がないように見えてしまった、ということ。