とある王国に生まれつき目が見えない姫がいました。
さらに不幸なことに姫の顔は言葉では言い表せないくらい酷く醜かったのです。
不憫に思った王は姫が自分の顔を見ることができないのをいいことに
侍女や家来に、姫が絶世の美女であるかのように接するよう命じました。
チヤホヤされることにより自分の中で美女として生きてほしかったからです。
姫の20歳の誕生日、盛大なパーティーが開かれました。
パーティーに来た魔法使いが、
姫の成人を祝して何かひとつだけ魔法を使いましょうと王に申し出ました。
王は困ってしまいました。
目が見えないこと以外、
何不自由ない姫の一番の願いは当然目が見えるようになること。
しかしその願いをかなえてしまうと醜い自分の顔を見て、
さぞかしショックを受けるでしょう。
なにより今までついてきた嘘がばれてしまいます、
王は姫に嫌われたくないのです。
王は悩んだ末、姫が2番目に望む願いをかなえるよう魔法使いに頼みました。
王「さぁ、おまえの2番目に望む願いはなんだ」
姫「私が2番目に望む願い、それは目が見えるようになることです」
王「馬鹿な!それはお前がもっとも望む願いであろう!」
姫「いいえ、私がもっとも望む願い、それはこの醜い顔を美しくすることです」
【解説】
目が見えていないのに、どうして姫は自分が
『醜い顔』であったことを知っていたのだろうか?
目が見えていたのに、
見えていないと言っていたのかと思ったが、
そうなると、
『私が2番目に望む願い、それは目が見えるようになることです』
という願いに矛盾する。
となると、
『侍女や家来に、姫が絶世の美女であるかのように接するよう命じました』
と命令したのは良いものの、
こっそり陰口や姫にイラッとしてつい本音が出た…
なんてことがあったために、
姫は自分が『醜い顔』であることを知っていたのかもしれない。
しかし、侍女や家来がそんなことを言っていることがバレたら、
死刑になるのではないだろうか…
そこまでの危険を冒すのか…
と思うとこれは違う気がする。
となると…
命令したのは『侍女や家来』であり、
"王妃"には命じていなかったのでは…?
そして、王妃は醜く生まれた姫が気に食わない、
チヤホヤされているのが気に食わない、
などと言った理由から、
「お前みたいな醜い姫を産んでしまったことが私の汚点だよ。」
とか
「目が見えないことで醜い顔が見れなくてよかったねぇ。
あんたの目が見えないから絶世の美女とチヤホヤされてるけど、
侍女も実際はあまりに醜くて近づきたくもないんだよ。
もし私がそんな醜い顔をしていたら生きてなんていられないわ。」
なんてことを言われ続けていたかもしれない。
虐待ですな。
そうなると、当然姫は目が見えなくても、
自分が醜いと認識し、
醜い自分が嫌になるはずである。
そのため、一番叶えたい願いが
美しくなることだったのだろう。
それにしても、今回の話とはちょっと違うが、
仮にずっと『絶世の美女』と言われ続け、
自分自身でも『絶世の美女』だと思っていたら、
目が見えるようになってから
自分の顔をどのように思うのだろうか?
生まれつき目が見えなかったら、
自分の顔が基準になるんだろうか?
ちょっと気になってしまうところである。