小さい頃に海でおぼれて意識不明の重体になったことがあるんだ。
その時、俺は俗にいう三途の川に行った。
そして、向こう岸には、俺のおばあちゃんが手を振っていた。
なんだか俺を呼んでるようだった。
小さい頃おばあちゃん子だった俺を、寂しくて呼んでるんだと思った。
そう思うと悲しいような、怖いような気分になって、
おばあちゃんとは、反対側に思いっきり走った。
一回だけチラッと振り向くとおばあちゃんはとても悲しそうな顔をしてた。
そこで俺はおばあちゃんはまだ生きていたことを思い出した。
【解説】
三途の川で
生きているおばあちゃんが呼んでいる方向とは
逆方向に思いっきり走った語り手。
おばあちゃんが生きているのであれば、
おばあちゃんの方向に行かなければいけなかったのでは・・
と思うものの、冒頭での
『小さい頃に海でおぼれて意識不明の重体になったことがあるんだ』
ということから語り手は今も生きている。
となると、この呼んでいたおばあちゃんは
語り手を誘い込むための別の者か?
おばあちゃん子な語り手には
『とても悲しい顔』をしたおばあちゃんを見るのは
非常に心苦しかったであろう…