「本当だってば!なんか視線というか気配というか…感じるんだって。」
「感じるってあんた霊感とかないんでしょ?」
「だからそういうのじゃないんだってばぁ。
ほらっ。なんか感じない?人がいるような…。」
「まったく。あんた神経質すぎるのよ。
そんなに気になるなら警察に相談してみたら?」
「う~ん…でも警察は事件性ないと動いてくれないって言うし…
しばらく泊めてくれない?」
「しばらくってどれくらいよ?あたし明日彼氏に逢うから一泊しか無理。」
「じゃあ一泊でいいから。」
「分かったよ。じゃあ行こ。」
「はぁ~、やっぱり感じる。
気のせいかもしれないけど気味悪いから引っ越そうかなぁ。」
「おかえり。遅かったね?
気のせいなんかじゃないし、引っ越しなんかできないよ。」
【解説】
霊感はないけど、視線や気配を感じる語り手。
最後の一文で
得体の知れない者が話している。
前半は語り手の家で話友人と話し、
後半は友人の家に泊まり行った帰りである。
語り手は、
『はぁ~、やっぱり感じる。気のせいかもしれないけど気味悪いから引っ越そうかなぁ。』
と言っていることに対して、
この得体の知れない者は
『おかえり。遅かったね?気のせいなんかじゃないし、引っ越しなんかできないよ。』
と言っている。
得体の知れない者が、
『気のせい』が何についてなのかを知っているのはなぜ?
これは前半で語り手の家で話していた時に、
話を聞いていた、ということだろう。
つまり、ずっと語り手の家の中にいた、ということ。
霊感がないというのが本当だとしたら、
ストーカーか何かなのだろうが…
このストーカーらしき者は
『引越しなんかできないよ』
と言っていることから、
おそらく
「これから君を殺すから引越しなんかできないよ」
という意味なのだろう。
危険を漠然と感じていたにも関わらず、
結局対処できずに語り手は…
なんとも悲しい話である。
似たようなことは実際に起きているんでしょうなぁ…