女の幽霊が出るという噂が立った。
そいつは、村はずれにある雑木林の中に、夜な夜な現れるのだという。
試しに、おれも見に行ってみると、木々の間に人影があった。
恐る恐る、懐中電灯の光を向けてみる。
スーツ姿の若い女だ。しかし、なにかが奇妙だった。
その時、女がくるりと背を向けた。
女には後頭部がなかった。
「のヴみゾ、ガえジで」
耳障りな声が、脳裏に響いた。
安心したので、帰って寝た。
【解説】
語り手は女性を殺して雑木林に埋めていた。
しかし、女の幽霊が出ると噂になってしまい、
その噂の幽霊が語り手が殺した女性であれば、
それが原因で犯行が発覚することを恐れた。
そのため、雑木林に確認しに行った。
結果として、語り手が殺した女性は
後頭部をえぐるような方法をとっていないし、
スーツ姿の若い女性でもなかったのだろう。
語り手が殺した相手ではないことがわかり、
自分の犯行はばれないと
『安心したので、帰って寝た』
『「のヴみゾ、ガえジで」耳障りな声が、脳裏に響いた。』
というのを完全スルーして安心できるこの語り手の
メンタルの強さは素晴らしいと思ってしまうのだが…