先日、古ぼけた骨董品屋で水晶玉を見つけた。
これが家に置いてあると、
その家の者は幽霊が見えるようになってしまうらしい。
この骨董品屋にはこういった怪しい道具がたくさん置いてあり、
ほとんどはデタラメである。
しかし俺は、この水晶を使ったイタズラを思いついた。
俺の先輩に、幽霊を全く信じていない人が居る。
現在は奥さんと2人で、いわく付きの物件に安い家賃で住んでいるらしい。
その先輩を、水晶を使って脅かしてやろうというイタズラだ。
水晶を買い、俺は友人と2人で先輩の家を訪ねた。
と言っても玄関から入ったのは俺1人で、
友人は幽霊の格好をして裏口から忍び込んだ。
水晶の話をひとしきりするが、先輩は笑っているだけで全く信じない。
すると、裏口の方で「バン!」という大きな音が鳴った。
もちろん友人の仕業だ。
先輩も、奥さんも、一瞬凍りついた。
場がシーンとなる。
そして奥さんが廊下の方を見て「ヒッ!」と小さな悲鳴を上げた。
全員が廊下に注目し、暫くすると
柱の影から徐々に白い手が伸びてくる……なかなかリアルで、ゾッとした。
先輩もガクガク震えている。
「もう良いぞ!」と俺は友人に声を掛けた。
すると柱の影から、幽霊の格好をした友人がヒョコっと出てきた。
先輩には本気で怒られたが、ドッキリ大成功である。
まだ震えてる奥さんには申し訳ないけど、
先輩の怖がってる姿が見られて愉快だった。
【解説】
『奥さんが廊下の方を見て「ヒッ!」と小さな悲鳴を上げた』
この時点ではまだ白い手が伸びてきていない。
果たして奥さんは何を見たのだろうか?
『まだ震えてる奥さん』
とあることから、もしかしたら
見てはいけないものを見てしまった、
という意味合いがあるのかもしれない。
それにしても、水晶の効果が
『家の者は幽霊が見えるようになってしまう』
とか何ともピンポイントというか…
なぜ『家の者』だけなんだろう、と気になってしまう。
奥さんには見えたけど、先輩は見えなかった。
つまり、家の者と認識されていない…とかだったらちょっと悲しい。
まぁ、どんな判断なのかよくわからないが。
それにしても、この『白い手』というのは
本当に友人のだったのだろうか??
幽霊の格好ということで、
白装束の格好というイメージはあるが、
白塗りまで行っていたのだろうか??
この『白い手』自体が幽霊だったのかもしれない。