老人『本当にこれで若返れるのか?』
男『えぇ。我社の開発したこの機械はあなたの細胞から全盛期だった若い体を生成し、
あなたの今の記憶を入れることで記憶はそのままに体だけは若返ることができます。』
老人『そうか…。お願いするよ』
そして老人はベッドに寝かせられシートが被せられた。
それから数時間。
老人(遅いなぁ…いつになったら始まるんだ?)
男『お待たせしました』
若い男『ありがとうございます。
こんなに上手くいくとは…ところでこの古い体はどうするんですか?』
男『こちらで処分いたしますよ。またのご利用お待ちしております。』
そう言うと男はベッドを焼却施設まで運んで行った。
老人(おぉ。前の誰かは若返りに成功したようだな。それにしてもやっと俺の順番か…)
若い男『ありがとうございます』
【解説】
『我社の開発したこの機械はあなたの細胞から全盛期だった若い体を生成し、
あなたの今の記憶を入れることで記憶はそのままに体だけは若返ることができます。』
今の記憶を入れる、という言葉から、
クローン人間を造るということがわかる。
つまり、老人自身の身体が若返るわけではなく、
クローンとして造られた『若い男』に
老人の記憶が渡り、『自分の記憶を持っている別人』が
自分として生活をすることになる。
若い男の
『ところでこの古い体はどうするんですか?』
というのがまさに老人を表しており、
『ベッドを焼却施設まで運んで行った』
と他人事のように考えていることから、
何も知らない内に焼却処分されてしまう。
自分と全く同じ記憶を持ったクローン…
お互いに自分自身がオリジナルだと思ってしまうため、
わけがわからなくなりそうである…。
動物でクローンが造られているとかいう話があったけど、
動物自体はどう感じているんだろうか?