(この辺りも、ずいぶん変わったのう・・・。)
「あ、ボク、山本さんの家は知ってるかの?」
「うん。知ってるよ。」
「すまんが、そこへ連れて行って欲しいんじゃが・・・。」
「いいよ。」
「ありがとう。昔のお友達に、お経を挙げに行きたいんじゃ。」
「お坊さん?」
「ああ。そうだよ。」
「ずっと昔に約束したんじゃよ。ずっと昔にのう・・・。」
「・・・ふーん。・・・あそこ!赤い屋根の家だよ。」
「おお。そうかい。ありがとう!とても助かったよ。」
「うん。じゃあね!」
「じゃあの。ありがとう。」
「・・・。・・・。こっちこそ、ありがとうね。」
【解説】
語り手は話し方からしてもそこそこ良い歳になっている。
また、案内してくれた子も『ボク』と呼ばれるくらい、
幼い子なのだろう。
この幼い子が
『・・・。・・・。こっちこそ、ありがとうね。』
という言葉を最後に残している。
話し方からしても幼いこの『ボク』は
「山本さんを供養してくれてありがとう!」
などとは思わないだろう。
むしろ亡くなった山本さんの生まれ変わり(もしくは本人の幽霊)であり、
遠い昔の約束を覚えていてくれていたことに
『ありがとう』と言っているのだろう。
生まれ変わりなどはオカルトではあるものの、
非常にほっこりする話である。