マラソン全国大会で優勝した俺はその日かなり浮かれていた。
帰りの電車、ハイヒールを履いたOLらしき女が大股開きで座っていたので
冗談半分に「パンツ見えてるぞ」と茶化すと
「私が見えるの?」
「え?」
俺は一瞬、頭が真っ白になった。
…が、すぐに現状を理解してビビリモードに突入!
タイミングよく最寄り駅に着いたので、そっから全速力で逃げた。
数十分走り続けただろうか。
頃合いを見計らい走るのを止めて後ろを振り向くと、さっきの女がまだ居た。
「うああああああ!!!!!」
俺が絶叫と共に腰を抜かすと、その女が笑いながら言った。
「さっきのは冗談ですよ」
【解説】
『マラソン全国大会で優勝した俺』
が
『全速力で逃げた』
にも関わらず
『ハイヒールを履いたOLらしき女』
が追い付いてきている。
語り手は疲れ切っていたのかもしれないが、
それにしてもさすがにOLのような格好の人に
全国大会優勝者が追い付かれるとも考えにくい。
しかも数十分もハイヒールで走れはしないだろう。
果たしてこの女性は何者なのだろうか…?
『さっきのは冗談ですよ』
というのが本当の言葉であれば幽霊ではない…。
隠れた逸材なのかはたまた妖怪のような者なのか…。
冗談です、というためだけに追いかけてきたのであればまだ良いが、
(いや、良いのか…?)
これが別の目的もあったのであれば非常に怖い。