ときは戦国。
各地の大名が天下を治めるべく戦いあったこの時代、
一人の刀鍛冶がおりました。
名は景光。
娘と二人、
山のなかで暮らしておりました。
この景光の作る刀は妖刀と呼ばれました。
なんと、刀に妖力が宿っているのです。
世に名高い妖刀、
粉白や赤錆も景光の作と言われております。
さて、この景光の住む山には
とある噂がございました。
何でも、この山に一度入った旅人は
もう二度と出ることが出来ないというのです。
この噂の真相は、
景光の刀の作り方にございました。
景光は製刀の最後の行程、
焼き入れで血を使っていたのです。
景光は旅人を捕まえると、
打ち終わって真っ赤に焼けた刀身で旅人の首をはね、
その血で焼き入れを行っていたのです。
その旅人の魂が刀に宿り、
妖刀と恐れられるようになったのです。
景光は今まで九十九本の妖刀を作りました。
景光は百本目で
人を殺めるのはやめにしようと考えました。
しかし、いつまでたっても旅人は来ません。
山の麓で、噂が広まり、
旅人は山を避けるようになっていたのです。
景光は待ちました。
しかし、いくら待っても旅人は来ませんでした。
景光は諦めました。
【解説】
景光が諦めたのは
妖刀を作ることではなく、
旅人を待つこと。
つまり、旅人ではなく、
娘を殺して
100本目の妖刀を作ることにした。
妖刀に魅入られた結果なのでしょうなぁ…