今まで、俺は何度も予知を経験してきた。
急に予知が始まるからタチが悪い。
その予知は良いことでは無く、全て悪いことだった。
お袋が亡くなる予知をした時は、
お袋が亡くなっても涙は流れなかった。
友達が事故で亡くなった時も、
あらかじめ亡くなることが分かっていた為、
涙は流れなかった。
いつも予知を経験している訳ではない。
風邪をひいてるときに感じる予知は、
大抵当たらないことが多い。
いつも風邪をひいていれば予知なんかせずに済むのに、
と何度思ったことか。
今日は修学旅行でハワイへ行く予定になっている。
空港に着くと、点呼が始まり、
クラス全員がその場に座らされた。
ふと、頭に映像が流れはじめた。
いつもの予知が始まった。
その予知は、
クラス全員を搭乗させた飛行機が大爆発をする、
というものだった。
映画みたいだな…。
今回は特殊で、
爆発に巻き込まれる衝撃も体が感じとっていた。
映画とそっくりだ…。
ふと、点呼の場に居ることに気付き、
辺りを見回した。
良かった、まだ搭乗前だ。
まだ間に合う。
だが、誰が俺の予知なんか信じるだろうか。
どうすればいい…。
点呼が終わり、
教師達が生徒達に搭乗口へ向かうよう指示を出していた。
俺『先生、搭乗時間、変更出来ませんか!?』
思い切って言ってみたが、
案の定、相手にされなかった。
まずい、このままだと爆発する飛行機に乗ることになる。
どうする、どうする…。
俺は教師に、
父親が急に倒れたので病院に行かなくてはならないと嘘をつき、
1人だけ搭乗をキャンセルしてもらった。
俺に笑顔で手を振るクラスメイト達。
さようなら、みんな。
俺は空港の展望台から、
クラスメイトが搭乗している飛行機の離陸する様子を見届けていた。
今日は風が強
『父ちゃん、テレビのニュースで空港が爆破テロだって。
兄ちゃん、大丈夫かな』
『なに、心配いらないよ。
爆破テロが起きた時間にはもう飛行機に乗ってる頃だよ。
お土産楽しみにしていような』
【解説】
語り手は飛行機に乗らなかったため、
空港の爆破テロに巻き込まれてしまった。
これまでとは違って
爆発に巻き込まれる衝撃を感じていたため、
語り手は爆発に巻き込まれる運命だったのかもしれない…