あるところに貧しいきこりがいました。
生活に必要なお金を得るために、
きこりは毎日森へ通い、
せっせと斧をふるいました。
ある日のこと。
きこりが森の中を歩いていると、
水の透き通った湖が目の前に広がりました。
きこりは、森を出る前に手を清めていこうと思い、
膝をついてかがんだところ、
背負っていた斧が湖に落ちてしまいました。
困った。
あれがないと暮らしていけないぞ。
きこりは途方にくれました。
すると、突然まばゆい光とともに、
誰かが湖の中から現れました。
それはとても美しい、湖の女神様。
手には二つの斧を持っています。
女神「あなたが落としたのは、
この金の斧ですか。
それともこの銀の斧ですか」
きこりは大きく首を横に振りました。
きこり「いいえ、女神様。
私が落としたのは
…赤い斧です」
【解説】
貧しいきこりはお金を得るために
森に来た人を殺して
金品を奪っていた。
斧が赤いのは
返り血がついているため。
だから、森を出る前に手を清めていこうと思い、
殺しがバレないように返り血を洗ってから
森を出ようと思った。
これでも正直者だと言われて
金の斧も銀の斧ももらえるのだろうか…?