私はミシェル。
私の夫のケリーは郊外にある大病院の医者なの。
富豪なんかも使用する様な所よ！
…と言っても夫のランクは中の下くらい。
生活は楽ではないけれど、私は夫を愛してるわ。
ある日、夫が凄いテンションで帰って来たの。
「ミシェル、聞いてくれ！
遂に大きな手術に携われる事になったんだ！！」
その日は二人でお祝いをした。
「貴方、どんな手術なの？」
私はさりげなく聞いてみた。
「あぁ…、いくらお前でも患者のプライバシーもあるからな」
…真面目な貴方らしいわね。
そうこうしながら１ヶ月が経った。
明日が手術の日…。
手術は別の病院で午後3時からだそうだ。
聞き出せたのはそれだけ。
そして、手術当日。
やはり早めに出掛ける夫にお弁当を渡した。
「貴方の大好物、入れておいたわよ。頑張ってね！」
夫は照れ臭そうに微笑んだ。
「行ってくるよ」
これが夫を見た最後だった。
午後7時、電話がなり、夫の死を知らされた。
手術後、医院長先生に送って貰う事になった夫は、
対向車線をはみ出したトラックに潰されたらしい。
幸い、医院長先生はかすり傷で済んだ様だ。
貴方…何故こんな事に…。
夫が最後に救った人に会いたい
と申し出たが、
プライバシーがどうのと言われ叶わなかった。
ケリー、貴方を失って…私はどうしたら良いの？
悲しみに明け暮れながら、
警察に手渡された遺品の整理を始めた。
…あら？
ケリーったらお弁当を食べてないわ。
緊張で食欲がなかったとしても、
大好物の甘い卵焼きだけは食べる様な人なのに…。
あぁ、ケリー！！
―あれから10年が経った。
今、私はとても幸せ。
15歳も年下のアレクにプロポーズをされたの。
「君とは初めて会った時、
何だか懐かしい気持ちになったんだ。
これは運命なんだよ！」
ですって。
彼ったら甘い卵焼きが大好物なのよ。
…実は私、貴方に会って全て分かってしまったの。
「お帰りなさい、貴方」
【解説】
海外であれば基本は右車線左ハンドルなため、
対向車と衝突した場合、
運転していたはずの医院長がかすり傷で助かり、
夫のケリーが潰されたとは考えにくい。
これは計画された犯行であり、
夫のケリーは後に出てきたアレクの移植をした後、
事故に見せかけ殺されてしまった。
アレクの大好物が夫のケリーと同じなのも移植を行ったため。
『お帰りなさい、貴方』なんて
語り手は夫のことが本当に好きだったんだなぁ…
