“それ”は何だろう。
ある人は「救いだ」と言い、
またあるある人は「呪縛だ」と言う。
色んな人が、
年齢や人種などに関わらずバラバラなことを言う。
だから、僕は実験してみた。
苦しい人は
皆“それ”を好意的にとらえる人が多かった。
逆に、楽しんでいる人は
“嫌なもの”としてとらえる人が多かった。
どっちなのか神父様に聞けばわかるかと思って、
神父様にも聞いてみたけど、
結局よくわからなかった。
わからないから自分で体験してみることにした。
父さんと母さんにその旨を伝え、
僕は準備を整えて、
“それ”について考えながら待った。
考えているうちに泥沼に沈み込んでいく気分になる。
あぁ。こういうことなんだ。
【解説】
『それ』は「死」のこと。
語り手は『死』は救済なのか呪縛なのかを考えている。
そのため、色んな人で実験してみた。
つまり、色んなやり方で色んな人を殺した。
神父様に関しては聞いただけ。
語り手は最後に自分を殺すために
遅効性の毒を使ったため、
泥沼に沈み込んでいく気分になりながら
じわじわと死に近づいていっている。
語り手にとっての『死』は
救済なのか呪縛なのかわからないが、
死を恐れていなく受け入れていることから、
救済に近いのか