「鏡よ、鏡よ、鏡さん。
世界で一番美しいのはだぁ~れ?」
「それは白雪姫、勿論あなたです」
継母を殺して奪い取った魔法の鏡は今日もいつもの言葉を返してくれた。
うふふ、馬鹿な女。
私の手の中で泳いでただけだって気付かなかったのかしら。
私の美しさに敵うものなんかないのに。
それが例え毒りんごでもね。
しかしお城の生活も暇だわ。
こんなにする事がないんじゃ太っちゃうじゃない。
折角のプロポーションが台無しだわ。
え…ちょっとこのお腹!!
脂肪が付いてるじゃない!!!!
あの馬鹿王子に付き合ってさっきまで飲んでたせいね。
こうしちゃいられない、早く出さなきゃ。
間に合うかしら…。
ふー。すっきりした。
ちょっと喉が痛いけど、これで大丈夫。
念の為にもう一度やっときましょう。
「鏡よ、鏡よ、鏡さん。
世界で一番美しいのはだぁ~れ?」
「それは白雪姫、勿論私です」
【解説】
美を追求するあまり、
物をきちんと食べられなくなり、
食べたら吐いて体がガリガリになってしまった。
そして、現実を直視しなくなった白雪姫は、
鏡に対して自問自答している。
もしかしたら、
一番美しい人は白雪姫です、と答えてくれなくなった魔法の鏡を
すでに壊してしまったかもしれない。
執着というのは恐ろしい…。