あらやだ!
夕飯に使うお肉買い忘れちゃった。
しょうがない。
だるいけど買いに行くしかないわね…。
今年小学三年生になった息子を連れていこうとしたけど、
どうやら部屋で寝てるみたい。
一人にしておくのは不安だけど、
どうせすぐ戻るから、連れて行かないことにした。
買い物を済ませて帰ってくるまで、
時間にして約10分。
最近近くにスーパーが出来て物凄く便利になったものだ。
あれ?鍵どこに入れたっけ…。
マンションの自室の前で、
鍵を探してゴソゴソ。
ゴソゴソ、ガタガタ。
やっとの事で、
買い物袋の奥に落ちていた鍵を広い出した。
家に入って買った肉を冷蔵庫にしまっていると、
息子の部屋から物音がした。
あら、起きてたのね。
様子を見に行くとあらびっくり!
息子が赤い液体まみれで倒れて居るわ!
普通の親なら死んでいると思って、
パニックを起こすだろう。
けど息子の悪戯になれていた私は、
すぐに演技だと見抜いたわ。
しゃがんで部屋を見渡してみると、ほら。
やっぱりベッドの下にケチャップが隠してあるじゃないの。
「コラ!食べ物で遊んじゃダメでしょっ!
服も床も汚しちゃって!
自分で後片付けしなさいよっ!」
とだけ言って夕飯作りに戻った。
でもあからさまに怒るのは可哀想だったかしら…。
物音立てたのも気付いて欲しかったからだろうし…。
でも、買い忘れもあって少しイライラしていた私は、
いつものように息子の悪戯に乗る余裕はなかった。
少しボーッとして調理をしていると
不意に胸に激痛を感じた。
耐えられなくなって、
うずくまって、察した。
ごめんよ…息子…
【解説】
二人は強盗に殺されてしまった。
息子は母親が出かけた後、
死んだりふりを始めたものの、
入ってきた人が強盗だと気づかず、
そのまま殺されてしまった。
その後、母親が帰って来たため、
強盗は逃げることができず、
母親が鍵を探している間に
家の中で隠れる場所を探していた。
そのため、
『ゴソゴソ、ガタガタ』
なんて音がしている。
結局母親は強盗に気づかず、
息子が死んでいることにも気づかず殺されてしまう。
それにしても、
ケチャップを使って死んだふりをする息子…。
個人的にはその悪戯にも慣れているくらい
色んな悪戯をしていることが恐ろしいのだが…。