僕はその日会社の先輩と深夜に
中でクラクションを4回鳴らすと何か起こると言われているトンネルに来ていた。
先輩がチーフからその話を聞いて行きたがったから
しぶしぶ僕もついてきたのだ。
僕は怖がりだ。
何か起こるなんて…。
こんな薄気味悪いトンネルだ。
きっと心霊的なことに決まってる。
1人でくればよかったのに。
その言葉を飲みこんで先輩に話しかけた。
「元原先輩。つきましたよ」
「おう。早く4回押してみろよ」
僕はそう言われてためらった。
だって、4回押してしまえば…
考えるだけで恐ろしい。
でも僕はそこでいいことを思いついた。
「先輩。2人で交互に押していきましょうよ。
僕に4連続で押せる勇気はありませんよ」
そう言うと先輩は鼻で笑ってOKしてくれた。
「じゃあ僕が先に鳴らしますね」
---ブーッ
---ブーッ
---ブーッ
---ブーッ
4回鳴らし終わった。
次の瞬間車の窓ガラスがわれて
先輩は窓の外に引きずられていった。
僕は先輩を残し車を走らせた。
その後先輩がどうなったのかは知らないが、
きっともう会うことはないということはわかる。
いつもは先輩の言いなりだったぼくにしてはいい考えだったと思う。
【解説】
語り手はこのトンネルの話を知っていた。
4回目にクラクションを鳴らした人が死ぬという話を。
『きっと心霊的なことに決まってる』
と言っていることから、
死ぬのはわかっていても、どういう状況で死ぬのかはわかっていなかっただろうし、
その話をどこまでそれを信じていたかはわからない。
しかし、そんな話があるのなら、
自分で4回目を押すのは恐ろしいから、
それを先輩に押させた結果
先輩が窓の外に引きずられていった。
なので、
『4回目にクラクションを鳴らした人が死ぬ』
という話は本当だったと思い、
『きっともう会うことはないということはわかる』
と言っているのだろう。
『いつもは先輩の言いなりだったぼくにしてはいい考えだったと思う』
と言っていることからやり返したい気持ちもあったのだろう。
…後輩からはそう思われないようにしたいものである…。