俺の親父は優しい人だが、
食べ物のこととなると途端に厳しくなる。
野菜ハンコってあるだろ?
模様や字を野菜に彫って、
絵の具につけて、
ハンコとして遊ぶアレ。
親父はあんなのでも怒るんだよな。
『食べ物で遊ぶんじゃない!』
って物凄い剣幕で怒鳴られたのを、
今でも覚えてる。
俺の小学生時代からのトラウマ。
すげー怖かった。
つい先日、
そんな親父が食べ物以外のことでキレた。
ねーちゃんが夕飯時、
おもむろに袖をまくって、
『タトゥー彫ったの』
とか言い出して。
見てみると、
マジで二の腕に花の刺青があるんだよ。
何やってんだよーって言おうとしたら、
いきなり親父が怒声を飛ばした。
鬼の形相で、
もう何言ってるかもわからんくらい興奮してる。
雰囲気がやばかったんで、
立ち上がったとこを羽交い締めにして止めた。
ねーちゃんは『ついノリで』だの
『友達も彫ったし…』だの、
言い訳しまくってた。
食い物のことでしか怒らないと思ってたから、
俺もかなりビビったわ。
普段は大らかなんだけどなぁ。
娘が浮ついてるのを、
親として許せなくなったのかな?
【解説】
『俺の親父は優しい人だが、
食べ物のこととなると途端に厳しくなる』
『食い物のことでしか怒らないと思ってた』
とのことなので、
食べ物以外のことに関しては
放置していたようだ。
にも関わらず、
姉がタトゥーを彫ったら
『鬼の形相で、
もう何言ってるかもわからんくらい興奮してる』
つまり、父は姉を食べ物だと認識しており、
食べ物である姉の体にタトゥーを彫ったことで、
父は怒ってしまった。
父が食べ物に関すること以外に関して放置していた理由は
「どうせいずれ食べるのだから、
どんな人生を歩もうが関係ない」
なんて考えていたのかもしれない…