父が豆腐…
いや、タンスの角に頭をぶつけて昏睡状態になった。
すぐに町医者に見せたが、
もう回復は望めないだろうと言われた…
さらに医者は続ける、
「今からでも葬る準備を始めた方がよいだろう」
判断力を失っていた俺たちは土葬の準備に取りかかる。
そして葬式もあげて半日も経っただろうか、
ふと頭をよぎったことがある。
「…あの医者、脈をとっていたか?」
いや、まさかな。
だが…?
心配になったオレは父の墓を見に行った。
「親父!」
そこにいたのは土と血に汚れた父だった。
と、医者が走るのがわずかに見えた。
迷わずオレは追いかける。
くそ…!
みうしなっ…【ドカ】
薄れる意識で見えたのは…町医者の薄笑いだった。
奥さん、残念ですが
息子さんも木の幹に頭をぶつけて、
意識は戻らないでしょう。
すぐに土葬の用意を。
泣き崩れる母と
その影で最後はお前だと言わんばかりの薄笑いを浮かべる医者、
この組み合わせほど滑稽なものはない。
【解説】
語り手も父も
事故に見せかけて
医者に殺されてしまった。
そして、
母もこれから殺されてしまう。
裏設定として
「過去に誤診をして、
この一家にさんざん文句を言われた」
というのがある模様。
誤診で散々文句を言われたから皆殺しとは、
発想が恐ろしい…