俺は昔好きだった女の子を泣かしてしまったことがある。
彼女はクセっ毛でそのことを非常に気にしていて
皆にもそのことでからかわれていた。
俺も彼女をからかってしまい、
とうとう彼女はヒステリックに泣き喚いて
学校で飛び降り自殺を図った。
実は、彼女には姉がいて
家でも両親に姉と比べられていて辛い思いをしていたのだ。
もちろん、本当は好きだったので謝ろうと思った
しかし彼女の両親と姉が事故で死んでしまい
彼女は叔父さんのところに引き取られることになり
学校を転校してしまった。
再会したのは高校生になってからである、
俺はあのときの事を詫びて
「俺の事どう思っている?」
と聞いてしまった・・。
彼女はメモを渡してくれた。
「一つの夕ヒね・・・。公園で待っています。」
俺は彼女に許してもらったんだと思い、
夜公園で待っていた。
途端に背中に激しい痛みを何度も感じた、
血だまりのなか意識が遠のく・・・・・・。
俺は彼女には・・・・・。
【解説】
『一つの夕ヒね』
夕ヒ+一⇒死
つまり、
『一つの夕ヒね』
とは、「死ね」のこと。
語り手は『夕ヒ』を「夕日」と勘違いし、
「貴方は夕日のようにまぶしい」と
都合の良いように解釈した。
さらに
「一つの」という言葉から
「貴方だけ」というイメージが植え付けられた。
こんな思い込みが激しい語り手だが、
後ろから刺されてしまい、
意識が遠のき…
彼女には許してもらえておらず、
むしろ自分を殺そうとするほど恨んでいたと知ったことで、
天国から地獄に突き落とされた感じだろう。
勝手に思い込んだのは語り手だが…
『俺は昔好きだった女の子を泣かしてしまったことがある』
という人はそこそこ多いと思うし、
実は両想いだったというケースもそこそこあるのではないかと思う。
(泣かせてしまうほどだとどうだろう…と思うが)
ただ、今回の場合は泣かせてしまっただけでなく、
『俺も彼女をからかってしまい、
とうとう彼女はヒステリックに泣き喚いて
学校で飛び降り自殺を図った』
とあまりにもひどい状況になっている。
にも関わらず、
『俺の事どう思っている?』
などと、
「好意を持っている」返事を期待しているような聞き方をする語り手。
あまりにも自分のことしか考えていなくて、
刺されてしまっても仕方が無いように思ってしまう…