わたしと竹田くんが付き合うことになったのは三ヶ月前。
わたしの方から告白した。
竹田くんはちょっと皮肉屋さんな面があるけど、
クールで頭が良くて大人っぽい。
いわゆるモテるタイプとは違うけれど、
ひそかなファンはクラスの女子にもけっこういる。
ただ、わりに頑固なところもあって、
特にオカルト的な事柄に関してはあからさまに嫌悪を示し、
ムキになって否定する。
「おれは心霊現象完全否定派だから」が彼の口癖。
「いいか、よく考えてみろよ。仮に霊魂なんてものが存在するとしたら、
なぜ人間の脳は認識や神経伝達を司るあれほど
複雑きわまりない仕組みを持ってるんだ?
死んだ状態でも思考や意識が残るなら、そんな仕組みは必要ないはずだろ?
それこそが、人間の精神が脳という器官によって産みだされた、
肉体に付随するものだということを証明しているのさ。
幽霊なんているわけがないんだよ。100%断言できるね」
最初にそんな説を聞かされた時、なるほどその通りだなあ、
やっぱり竹田くんは頭いいなあ、とわたしは思った。
いまはそうは思わない。
そんなことより、
ここ最近竹田くんにどうしても伝えたいことがあって、
あの手この手を使ってさりげなくメッセージを
送っているんだけど、なかなか気付いてくれないので、
とてももどかしい思いを味わっている。
それとも、じつは気付いているのに知らないふりをしているのかな。
竹田くんったら本当に頑固なんだから。そこが可愛いんだけどね。
そんなところも含めて、いまでもわたしは彼のことが大好きだ。
ずっと見つめていようと思う。
【解説】
竹田くんの心霊現象否定派の理由に対して、
『なるほど』と納得していた語り手。
しかし、
『いまはそうは思わない』
ようだ。
語り手からのメッセージにも気が付いていないようなので、
この語り手はすでに亡くなってしまっており、
幽霊となっているのだろう。
語り手は
『ずっと見つめていようと思う』
と言っているが…
これは守護霊の部類となるのか、
悪霊の部類となるのか、
害のない幽霊となるのか気になるところである。