「どんな願いでもかなえてやろう。ただしひとつだけ、な」
と魔神は言った。
ひとつだけ、か……。
富。いや、
名声。いや、
美女。いや、
絶対権力。いや、
不老不死。いや、
世界平和。いや、
究極の快楽。いや、
宇宙の真理の解明。いや、
悟り。いや、
時間旅行。いや、
超能力。いや、
他の生物に生まれ変わる。いや、
なんか漠然と「最高の幸福」。いや、
……だめだ、決められん!
悩んだ末、おれは魔神にこう頼んだ。
「今挙げた中で、おれが本当に心の底から望んでいる願いをかなえてくれ!」
「わかった。それでいいんだな」
魔神はそう言って消えた。
それから一年。
いまだにあの時かなえられた願いが何だったのか、よくわからない。
もうすぐ戦争が始まる……。
【解説】
『世界平和。いや、』
↓ ↓ ↓
『世界平和。嫌、』
が叶えられたんでしょうなぁ…
ただ語り手は
『本当に心の底から望んでいる願い』
を叶えてもらっている。
魔神がそれを無視して願いを叶えたのかもしれないが、
それだとしたら結局願いを叶えているわけではないので、
わざわざ魔神が聞く必要もないだろう。
となると…語り手は実際に
心の底から「世界平和。いや、」と
望んでいたわけで…
今の世の中に絶望していた時に、
魔神が来たということだろうか…?