ある日、彼女が手を怪我した。
傷口から垂れた血が二の腕まで伝わり、左袖が赤くぬれている。
俺は応急処置をした後、彼女が病院へ向かうのを見送った。
しばらくして、彼女が帰ってきた。
包帯を巻かれた右手を見せながら、
「すぐ治るから大丈夫」
と笑っていた。
【解説】
『傷口から垂れた血が二の腕まで伝わり、左袖が赤くぬれている』
とあることから、怪我をしたのは左手のはずである。
しかし、彼女は、
『包帯を巻かれた右手を見せながら』
と、左手ではなく、右手に包帯が巻かれている。
『俺は応急処置をした後』
とあるため、語り手は左手の怪我を確認しているはず。
なのに、なぜ右手に包帯が巻かれているのだろうか?
語り手は血を拭いただけで応急処置だと思っていたが、
実は怪我の確認をしていなかったとか?
となると、実は怪我をしておらず、
心配してもらうための偽装リストカットの可能性もあるのだが…
(その場合、包帯は病院内で自分で巻いたことになる)