「お前に今から最初にやってくる二択がお前のこれからにとって重要になる。選択を間違えるなよ。」
「だ、誰ですか?いきなり人の部屋に入り込んで。警察呼びますよ?」
「私は神のような者だ。それより選択を誤るなよ?」
「神?何を言ってるんですか?本当に警察を呼びますよ?」
「まぁ、よい。とにかく選択を誤るな。私は見ているぞ。ではな。」
なんなんだろう。
いきなり入り込んで訳の分からないこと言って出て行った。
でも二択って?
今の俺にある二択って言ったら、ミカとクミどっちと付き合うかぐらいなんだがな…。
ケータイがなった。
新着メール二件。
ミカとクミからだ。
同時に誘われるとは。どっちとデートしよう。
最初の二択ってこれか?
う~ん、ミカは家が近いから歩いて行ける。クミの家は電車で二駅先か。
よし、ミカにしよう。
俺は歩いてミカの家に向かうことにした。
ミカの家に着き部屋に入る。
するとすぐに煙の匂い。
火事だ。熱い。焼けるように熱い。
「選択を誤ったな?もう一つの選択肢を選んでいたらどうなったか教えてやろう。」
気づくと家に居た。じゃあクミだ。電車に乗り込む。
「次は~、○○。」
知らない駅だ。どういうことだ?
満員の乗客に押し出されるようにして降りてしまった。
そこに駅や電車はなくきれいな景色と、幸せそうな人々がいた。
「こっちのほうが正解だったな。お前は誤ったからあっちだ。ククク。」
体が焼かれる音しか聞こえなくなった。
最後に聞いたのは、二人の女のすすり泣く声だった。
【解説】
ミカを選んだ場合、
『火事だ。熱い。焼けるように熱い。』
クミを選んだ場合、
『そこに駅や電車はなくきれいな景色と、幸せそうな人々がいた。』
ミカ:地獄(の業火)
クミ:天国
を示しているのだろうか。
つまり、地獄と天国の違いはあれど、
どちらを選んでも死んでいた。
『体が焼かれる音しか聞こえなくなった。
最後に聞いたのは、二人の女のすすり泣く声だった。』
天国を選んだ場合は、
意識が残っているまま焼かれたのだろうか…。
それにしても、女性関係の重要な二択と言われたら、
普通は『結婚』を考えるのではないだろうか?
近い家の方をあっさり決めるなんて…
この語り手はなんとめんどくさがりなのだろうか…。