左眼の視力が極端に落ちた。
医者に相談すると、角膜移植の手術をするということになった。
俺は怖がりだから、全身麻酔をしてくれと伝えた。
手術台に寝転び麻酔をかけられる。
目が覚める頃には終わっているとのことだった。
眼帯をしているせいで目覚めても真っ暗だった。
まったく見えなかったが無理に目を開けようとするなといわれた。
少しもどかしかったが、まあ自分の眼のためだ。我慢した。
数ヵ月後、確かに視力は回復したらしい。
だが医者には逃げられ、あいつらのことはどうあがいても知りえない。
俺は暗闇のなか生きていくか、死ぬかしかないようだ。
【解説】
『角膜移植の手術をするということになった。 』
但し、手術したのは視力が落ちた左眼ではなく健康な右眼。
つまり語り手の健康な右眼の角膜を他の誰かに移植された。
『数ヵ月後、確かに視力は回復したらしい。 』
これは語り手ではなくほかの誰か。
他の誰かのために騙されて健康な右目を差し出し、
これから何も見えない生活が続くのはなんともやるせない。