さて、そろそろ出かけるか。
時計を見ると昼過ぎだった。
あー、まだ顔洗ってなかった。
めんどくさいけど仕方が無い。
洗面所の水を出してジャバジャバ顔にかける。
洗顔料を指の上に乗せ、
泡立てて顔に広げ
マッサージしながら洗う。
コポコポと排水溝に流れていく水の音が響く。
ちと水流しすぎたな・・・
そろそろ洗い落とすか。
手探りで水を探す。
あ、あれ?どこだ?
手に水がなかなか当たらない。
泡が目に入るのをこらえながら、
直接目で探す。
蛇口、蛇口・・・どこだ?
ああ、蛇口あった。
蛇口をひねって水を出す。
水を顔にかける・・・
やっと洗い落とせた。
顔にタオルをあて、水気を切る。
あ・・・なんか洗面所の鏡見るのが怖いな。
ヒゲまだ剃ってないけどいいや。
そのまま逃げるように家を出た。
【解説】
水を流しながら顔を洗っていたにもかかわらず、
気が付かない内に蛇口の水が止まっていた。
つまり、語り手以外の何者かが
蛇口を止めたことになる。
もしかしたら背後に何者かがいるかもしれない。
となると、鏡を見るのは恐ろしくなるだろう。