僕は今、唯一の血縁の母親と一緒に山奥の別荘に来ている。
母さんにはどうやら恋人がいるらしく、
僕とより恋人といたくて断るんじゃないかと心配してたけど、
母さんは喜んで一緒に来てくれた。
泊まっているウッドハウスは、
暖炉があるとても気持ちの良い家だ。
僕が一人で近くの森を散歩していると、
急にザーザーと雨が降ってきて
びしょ濡れになってしまった。
慌ててウッドハウスに戻って着替えた。
リビングに行くと、
母さんは暖炉に火をともして、
そばに椅子を置いてくれていた。
「濡れちゃって寒いでしょう。
さ、この椅子に座って暖まりなさい」
僕はありがたくそこでゆったりすることにした。
座った僕に、
母さんは大きな毛布を掛けてくれる。
暖かくて、僕はつい眠ってしまった。
パチパチという音で目が覚めた。
足が熱くて、見てみると、
毛布に暖炉の火が燃え移っていたのだ!
慌てて逃げようとしたけど、
すぐに火は燃え広がり、僕に燃え移った。
「母さん!!水!!」
慌ててはたいて消そうとしたけど、
更に強くなるばかり。
熱くて僕は絶叫した。
そこに、
バケツを重そうに持った母さんが来た。
「あら、ちょっと待ってて」
そう言うと
すぐに母さんはバケツの中身を僕にかけてくれた。
しかし、楽になるどころか
バケツの中身がかかった部分から
耐えきれないような熱さが僕を襲った。
「かあ……さ…ん?」
それっきり僕の意識は途絶えた。
『……続いて次のニュースです。
山奥の別荘が全焼する事件が起きました。
焼け跡から一人の男性の遺体が見つかり、
身元の確認を急いでいますが、
遺体の損傷が激しいため、
身元確認は難航しています』
【解説】
『バケツの中身がかかった部分から耐えきれないような熱さが僕を襲った』
から、かけられたものは水とか灯油ではなく、硫酸の類。
恋人と一緒にいるのに息子が邪魔になったため、
何が何でも息子を殺すという強い意志を感じる。
バケツ一杯に硫酸とか…
その強い意志が恐ろしい。