私はこじんタクシーの運転手をしている。
タクシーとは言っても
昼夜を問わず駅前で客待ちはしない。
市街地を流したりもしない。
会社で待機して、
罰を与えられる者を執行施設に送ったり、
晴れて罪がないと判定された者を楽園へ送るのが仕事だ。
基本的には運賃は取らないが
川を越えるときには六文ばかり運賃を頂く。
さて、また罰を与える施設に客を送らなければ。
しかしたった一人で死者の罪を判断するなんて…
あの人も大変な仕事だ。
【解説】
『こじんタクシー』は
「個人タクシー」ではなく、
「故人タクシー」
『罰を与えられる者を執行施設に送ったり、
晴れて罪がないと判定された者を楽園へ送るのが仕事だ』
天国と地獄に送るのが仕事のようだ。
『基本的には運賃は取らないが
川を越えるときには六文ばかり運賃を頂く』
川まで渡れるタクシー…
この世のタクシーではないとはいえ、
川も渡れる高性能なタクシーのようだ…
一体どんな形をしているのだろうか…
『しかしたった一人で死者の罪を判断するなんて…
あの人も大変な仕事だ』
これは閻魔大王のこと。
本当に一人で死者の罪を判断していたら
いくらあっても時間が足りなそうである…