学生の頃、5000円札を盗まれたことがあった。
体育の時間の後のことだった。
「先生!お金を盗られました!」
その一言で授業は中断。
かくして犯人探しが始まった。
物々しい雰囲気の中、全員財布の中を出した。
5000円札が入っていたのは3人。
緊迫した空気になった。
そしてとどめの一言。
「お札の右下に小さく名前を書いておいた」
犯人は見つかった。
そいつは俺を泣きそうな目で見てた。
俺は目を背けたよ。
そいつは停学処分に処されたらしいのだが、ことがことだからな。
学校にいずらくなったらしく、自主退学ということでやめてしまった。
まぁ、めでたしめでたしっていうわけだ。
それにしても驚いたよ。
まさか札に名前が書いてあったなんてな・・・・・・・全然気付かなかったよ。
【解説】
『先生!お金を盗られました!』
と言った生徒からお金を盗んだのは
おそらく語り手。
では、その盗んだお金が
なぜ『そいつは俺を泣きそうな目で見てた』という彼の元に渡ったのか?
語り手からお金を盗んだのだとしたら、
こんな目で語り手を見ないだろう。
ということは、語り手が盗んだ5000円で
彼に借りていたお金を返した、
両替してもらったなどで彼の元へと渡ったということに。
何もしていないのに犯人にされるのは本当に怖いものである…。
余談だが、
今回の話でお札を確認してみた。
そこでお札の人の名前がついていることを今回初めて知った。
千円札と一万円札は右下あたりに
五千円札は真ん中あたりに名前が書かれている。
今更知ってしまった事なのだが、
これは知っていることが当たり前なのだろうか?
知っていることが当たり前だったのだとしたら、
私が今ようやく知ったという事実が怖い…。
当たり前ではないことを祈っておきます。